詩と写真でつづる311 関久雄「原発いらない、いのちが大事の歌」

「あったかいうちに」

あったかいうちに
生きているうちに と かけつけた
夜中の 岩手医大 救急救命センター

やせて 小さくなった 母ちゃん
あんぐり開けた口に管 点滅する指先
目 とじたまま 息 ヒュー ヒュー
いたましねえのお

「母ちゃん みんな来たよ 目あけて」と 妹が耳元で呼んで
「おばあちゃん 早く元気になって」と レンが泣いて
おれは 母ちゃんのひたいに手をあて
むくんだ手を握って話しかけた

いままでありがとな
母ちゃんの 子どもでいがった
さっぱり 親孝行しなくて悪がったな
苦しいべな もう少しだから
じき 光 見えっから そしたら
明るいほうさ行けば だいじょうぶ

原発事故の後 母ちゃんから手紙きた
「ヒサオ 具合悪いって聞いたども ホウシャノウだべが
おめえも爺さまの年だけんど オラより先に逝ってはわがね これは約束」
ドックンドックンの脈 あったかくて ふくれた手
いたましねえのお おれは 母ちゃんが苦しまねえで
ふわっと 魂の世界に行けるよう祈った

明け方 母ちゃんは持ち直したが やはり時間の問題と
いまはゆっくり 死ぬる仕度
おれは 受け入れる仕度
あったかいうちに 生きているうちに

(2016年4月3日)



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by johnny311 | 2017-07-06 07:21 | 日々の詩2016年