詩と写真でつづる311 関久雄「原発いらない、いのちが大事の歌」

カテゴリ:第2集( 22 )

「幸せな死」

20※ミリシーベルトでも大丈夫
そんな声を尻目に 佐渡へやってきた
海で泳ぎ 草や土に寝転ぶ子どもたち
大きな子は 小さい子を
お母ちゃんはご飯を 父ちゃんは風呂を
それぞれの役割をこなす ぼくらは大家族

空 青く 子どもの遊ぶ声
死ぬにはいい日だ※
老人の仲間入りをした ぼくは 古いインデアンの言葉をつぶやく
すると ナリイがこう言うのだ
保養の子どもを
看取る日が 来るかもしれない
一瞬 ベラルーシの病室の
青白い 子どもたちの顔が浮かび
ぼくはうろたえた
おい 順番がちがうだろ
おれが先に逝って 子どもたちを
迎えに来なくちゃいけない ちがうか

チェルノブイリの教訓は
年寄りのわたしが 大人にならないままの
ユイやリオやミーノやレンの
野辺の送りを お前がやるのだと 教えている
家族や友だちに看取られる 幸せな死
それを子どもたちに渡せるだろうか

20ミリシーベルトでも大丈夫です
と誰かが言う でも 放射能は
そう言うあなたにも 降ってくるんですよ
だから 原発はいらない
あなたにも 原発はいらない

(2012.9.3)

※ 年間1ミリシーベルトとされてきた外部被ばく線量の基準が、事故後一挙に20倍に引き上げられた。
※ アメリカンインディアンの生死観をを表した言葉

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by johnny311 | 2013-07-12 07:10 | 第2集

おかあさんって よんでみた

おかあさん って よんでみた
はあい って へんじ きた

なんでもない ただ
こえが ききたかっただけ

おかあさん って よんでみた
なあに って へんじ きた

なんでもない ただ
よんで みただけ

おかあさん って よんでみた
どしたん ってへんじ きた

あのね わたしね
おかあさんの
こどもでよかったよ

うんでくれて
ありがとう

(2013.2.1)

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by johnny311 | 2013-07-11 19:47 | 第2集

ワタシハ ハル

ワタシハ ハル※
モニタリング ポスト
ホウシャノウ ヲ ハカッテマス

ワタシヲ ミテ
「高い」トカ「低い」トカ「本当か」ト イワレマス
ワタシハ セッテイサレタ プログラムノ トオリ
ウゴイテイマス

ワタシノ ナマエハ ハル
モニタリング ポスト

ヨナカニ ワタシノ カラダニ ショウゲキガ アッテ
ワタシハ コワレマシタ
マモナク ウゴケナク ナリマス

ワタシハ ハル
コワレタ カラダヲ ミテ
「かわいそう」ト イワレマシタ
ニンゲンノ コドモ デス

ワタシハ ハル
マモナク キノウ シナクナリマス

ワタシハ ハル
・・・

(2013.2.10)

※作者が街中にある放射能測定器に架空に付けた呼び名。因みに「2001年宇宙の旅」に出てくる史上最高の人工知能もHAL(ハル)という。

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by johnny311 | 2013-07-10 08:24 | 第2集

待合室で

セキさん どうも
ああ ヤマダさん お久しぶり
新聞 読みましたよ
土 持って 東京まで行ったって
イヤイヤ お恥ずかしい
きょうは どちらまで
飛騨高山です
相変わらずの ごかつやくで
イヤイヤ 呼ばれるうちが ハナですから
お人がらですよ 遠くから 応援してますよ
では これで

遠くからの応援って なんだろう
外野席で フレーフレーって 言うのかな
もっと 近くで
応援してくれると いいけどな

(2013.2.12)

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by johnny311 | 2013-07-10 07:32 | 第2集

原発トイレ

トイレそうじは わたしの 日課
シュッシュ ゴシゴシ ああ きれい
コックをひねって 流します
ウンコ バイバイ オシッコ バイ
浄化槽の中で ハッコウし 水とガスになるんだね
でも いまは セシウム きっと残ってる

原発には トイレがないから
ウンコが たまってんだって すると
誰かが やってきてささやくんだ

トイレをどこにしますかね
マグマの中か 宇宙の外か
つまるところ 処理できないので
原発はいずれ なくなりますよ

えー、 じゃ、何でいま 動かしてんだよ

それはですね お金もほしいし
ゲンバクもほしいから 動かしているんです
稼げるときには しっかり稼がなくちゃ
死の灰が降ろうと お金のためなら
いのちもいりませんよ

あんた だれ と聞くと
ニヤッと笑って 消えた

(2013.2.11)

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by johnny311 | 2013-07-08 07:05 | 第2集

かなわないや

電車の中
子どもに ほおずりする お母さん
自信に 満ちて
それで どこか 色っぽい

この 白髪 抜いてけろじゃ
鏡を のぞき込みながら 母っちゃの言う
びん油の におい
母の中にある おんなを 感じて
いやだった 少年の頃の わたし

目の前の
子どもを 抱っこする お母さん
わたしの目を キッと 見る
失礼しました
それでも どこか かわいらしい

母親 おんな 女神さま
やっぱり 女のひとには かなわないや

(2013.2.12)

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by johnny311 | 2013-07-07 00:15 | 第2集

ゲンパツ難民

オオクマ※にいても
なんも考えてこなかった
友達のダンナ 働いていて
いい金 取ってんだろうなあって

そんな危険なもの 作るはず ないじゃない
と 思っていた 事故までは

ヒナン所に入ったら きっと 動けなくなる
遠くへ できるだけ 遠くへ
若松 新潟 日本海
ふたりの子どもと 転々と
やっと ここへ たどり着く

あれから2年 ようやく2年
やっぱり 帰ろうよ と ダンナの言う
何か あったらどうするの
この子の 先は どうなるの

わたしは気づき 悔やんでる
マスクをつけずに 空気の吸えること
水が 蛇口から 飲めること
あたりまえの 生活のある 愛しさが

おそろしいのは 無関心
セイジも センキョも ゲンパツも
起きてからでは 遅すぎる
失くしてからでは 遅すぎる

(2013.2.12)

※福島第一原発の1号機から4号機が立地する大熊町。

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by johnny311 | 2013-07-06 08:21 | 第2集

ひなちゃんと紙芝居

おかあさん
あの 紙しばい※
とっても かなしい お話だったね

絵も きれいだったね
サッカーボールも 描いてあった
れんくん ぶかつも できなくなっちゃって
おともだちや おとうさんと
わかれなきゃ ならなくて
かわいそう だった

おとうさんと
さよならしなきゃ いけないところで
ぎゅーって してて
ひな なみだ 出そうになった

ひなちゃん
あれは ぜんぶ
ほんとうの話 なんだって

えっ そうなの

原発 ばくはつ したことも
おともだちや おとうさんと
わかれなきゃ ならなかったことも
だまって 転校 したことも

いまは 米沢に いることも

(2013.2.20)

※2013年の2月に座間の麦っこ保育園で園児を対象に福島の話をしたときに披露した、作者の子ども(当時小6)が原発事故から避難、そして帰還、さらに一年かけて米沢に転校するまでを描いた紙芝居。ひなちゃんはそれを鑑賞した児童。その感想を母親に話したことがとても感動的だったので、ほぼそのまま詩にさせていただいた。

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by johnny311 | 2013-07-05 09:07 | 第2集

なじょすべ

わたしね 病気 治すために
ムノウヤク野菜を 何十年も 食べてきた
福島で 野菜 こさえるごども そこさ 居るごども
やっては なんねえと 思うのさ
だから カンパ 送らなかった
まごどに 気の毒 だったども
と エミさんの 言う

測定所 立ち上げた
この 小松菜は 不検出
よかったら 買ってくなんしょ
それでも お客さん 三分の一
と タモツさんの 言う

下の 田んぼ 川の水が上がっから
1万ベクレル あるんだよ
阿武隈川の 青い 流れを見ながら
スギウチさんの 言う

ペットボトルの水道水 福島市が 売り出した
すると 世間はこう 言うんだ
カルト そのもの もう犯罪
ストロンチウムは 測ったの プルトニウムは 出てないの
フクシマ県を 閉鎖しろ

なじょ すべなあ

おめさん方よ
確かに オレも食わねえし
飲んでくれとも 言わねえが
悩む こころに 沿うてくれ
オレたちに 欲しいのは
痛みを 分かつ こころだよ

(2013.3.1)

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by johnny311 | 2013-07-04 00:34 | 第2集

ヒバクシャ

わたしは ヒバクシャ 誰かを汚染する

三月の浅い春 あなたに 会いたい
会って ハグして キスをしたい

わたしの長い髪 お気に入りのシャツ スニーカーの底
なに食わぬ 顔して こびり付いてる ホウシャノウ
会うたびに あの人にこすりつけ
だ液に セシウムを うつしこむ

わたしは 知っているんだ
フクシマに 来てくれるあなたが
帰りに 銭湯に 寄っていることをね

わたしは ヒバクシャ 誰かをヒバクさせている
そんな存在になってしまったことが
悲しい 切ない つらいよ

すると あなたは言う

だいじょうぶ わたしも ヒバクシャ
春風にのって 新幹線にのって
川になって ガレキになって
広く うすく 時には 濃く
死の灰は 静かに 遠くに 拡散している
見えない収容所は フクシマだけじゃないんだよ

やがて 舞い落ちる ホウシャノウ
わたしにも 愛おしいあなたにも
原発で ご飯を食べたい あなたの頭上にも

わたしたちは ヒバクシャ
誰かを 汚染する

(2013.3.8)

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by johnny311 | 2013-07-03 07:15 | 第2集