詩と写真でつづる311 関久雄「原発いらない、いのちが大事の歌」

「マミイと 旅びとと 虹」

 マミィは小さなおんなの子。ふしぎなちからがあります。虫や花や、お星さまとお話ができるのです。でも、そのことはヒミツです。「へんな子」と言われるからです。ただ、お母さんはだけはいつも、「そうなのね」と聞いてくれていました。

 ある日、マミィのうちにひとりの旅びとがやってきました。かみを長くしたヒゲの老人でした。旅びとはずっと遠い、北の国から歩いてきたのです。荷物のなかには旅びとの家の庭の土がひとにぎり袋に入っていました。

「この土の中には毒(ドク)が入っていてな、この毒をまきちらかした都(みやこ)の長(おさ)にかえしにいくんだ」と言いました。

 マミィはなんだかこわくなりました。まえに大きな地しんがあって、それから東の海べの工場でバクハツ事故があり、お父さんやお母さんたちと遠くへにげたことを思いだしたからです。その毒はマミィの町にもふってきて、それからあまり外であそべなくなりました。その夜、毒の袋は家の外に置かれ、旅びとはマミィの家にとまりました。

 よく日はつよい風がふいていましたが、旅びとは南の都にむかって出発しました。お母さんやお父さんは、旅びとがぶじに都にたどり着けるようにいのり、マミィも手を合わせました。老人が出発して、しばらくしてから雨がポツポツとふってきました。マミィは心配になって窓をあけ、空を飛んでいる鳥にたずねました。

「とりさん とりさん ヒゲのおじいさんは どうしていますか」
「ああ、むかい風の中をあるいているよ、ときどき立ちどまって おなかをおさえているがね」

 マミィは、ますます旅びとのことが心配になりました。ふと、山あいに虹が見えたので外に出て虹のほうにむかって走っていきました。虹は人のこころを元気にしてくれると聞いたからです。でも、追いかけても、追いかけても、虹はどこかへ逃げていくようでした。虹は、どの人のこころをかがやかせようかと、だれかをさがしていたのです。マミィはさけびました。

「にじさん、にじさん、みなみのほうで たびびとさんが むかい風でこまっているの。おねがい、げんきにさせてあげて」
 すると、虹はにっこりほほえんで南のほうへ向かっていきました。

 雨と風のなかを歩いていた旅びとは、ふと、風がやんだことに気づきました。雨もあがって山のむこうにはきれいな虹がかかっていました。雨にぬれた木の葉がキラキラ光っていて、毒も少し落ちたみたいでした。しばらく、ぼんやりしていると、道の向こうから笛やタイコや、タンバリンをならして誰かがやって来るのが見えました。旅びとと、いっしょに都を目ざすなかまたちでした。
 
 おうちに帰ったマミィは手を合わせていのりました。

「どうか おじいさんが ぶじに みやこにつけますように 
どうか おじいさんのこころが にじいろに かがやきますように」


 仲間と歩き出した老人は、山のむこうからマミィの声が聞こえたような気がして振りかえりました。見あげると、虹はいっそう輝きをまして、そして消えていったのです。

(2014年11月4日 原案/おおさき まみ)


by johnny311 | 2015-07-30 11:31 | 日々の詩2014年