詩と写真でつづる311 関久雄「原発いらない、いのちが大事の歌」

カテゴリ:第2集( 22 )

病院にて

点滴は ポタッ ポタッ
手術のマスイ 切れ
痛い いたい と 娘の うめく

前十字じん帯 断裂
高校最後の バスケの試合で やっちまった

痛いよなあ と
冷たい足先をさするが
目は なんとなく のど元へ
甲状腺に のう胞 2との診断
避難もしたし 西の野菜も食べさせた
マスクは嫌がっていたなあ・・・

逃げた日に ヨウ素がいっぱい降ったって
と 連れ合いがこぼす
仕方ねえべ ガソリンはねえし
南さ 所沢しか 行くとこ ねがったんだよ

チェルノブイリの知見では 4年後※と
100倍にもなった フクシマの甲状腺ガンを否定する
バカヤローの 医大

ありがとう 温かくなったよ と 娘の言う
そう 良かった
お父さんの手からは 気が出るんだよ
足を さすりつ 祈ります

おまえの
いのちのちから 失せぬよう
わたしに
まことの やさしさ 宿るよう

(2013.3.10)

※甲状腺異常が福島の子供たちに早くも発見された時に、チェルノブイリでは4年後からという論拠で放射能との因果関係を否定した。

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by johnny311 | 2013-07-02 07:56 | 第2集

たたり 神

おばあちゃん あれは なあに

あれは ゲンパツの お墓
青い 袋※の中には
草や 花や 土や ミミズが 虫が ビセイブツが
ホウシャノウと 一緒に閉じ込められ
とてつもない ホウシャセンを あびながら
袋の中で うめいてる

ほら 声が 聞こえるだろう
痛いよ 痛いよ  苦しいよ 苦しいよ
あのものたちは わたしたち
袋の中から 出されない

ごらん 黒いゴムで覆って
回りを 鉄の板で囲んでなんぞしているが
なあに いずれ あのものたちは
袋を食い破って 外に出て
たたり神となって 動き出すさ

風になって 雨になって
けものになって 草になって
米になって 魚になって
生き物の中に 忍び込む

おばあちゃん たたり神は かくならないの

あれは にんげんが こさえたものだからね
お前は 遠くに行きなさい
見たこと 起きたことを伝えなさい
わたしは ここで たたり神を まつろう

そして 考えなさい
なぜ たたり神が生まれるのかを

(2013.3.10)

※除染した汚染土を入れるビニールバッグ。約1.5トン入る袋が三段重ねに山積みされ、その上を黒いゴムシートで覆って仮置きされている。袋の耐用年数は3年ほどだという。

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by johnny311 | 2013-07-01 06:58 | 第2集

風邪っぴき

野菜と水と 出しと味噌
ひと煮立ちして できあがり
食わせる 相手がいなくなると
ずいぶん 雑に なるもんだ

どうだい サッポロは
お父さんは 佐渡で 風邪ひいちゃった
だいじょうぶなの 早く なおしてね
わたしは 少し ホームシック

薄ら寒い 三月に
父は 30人のごはん炊き
トランク コロコロ引きずって
娘は 北の島に立つ

娘さん 避難されたんですね
まあ 進学を兼ねて ですけど
さみしくなりますね
遅かれ早かれ みんな 出ていくんですから
親元を フクシマを

おととい みんなを 見送って
きのうは ぼくが 見送られ
きょうは ひとりで 汁つくる

温かいものを 食べなくちゃ
湯タンポも 入れなくちゃ

あなたに 会えないさみしさに
こころも 風邪を 引いたかな
なあに 目をつぶれば
すぐに 会えるさ と
味噌汁を すする

(2013.4.10)

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by johnny311 | 2013-06-30 08:25 | 第2集

手放せば

わたし ずっと 落ち込んでいた
好きなあの人への 想い
どうしても 手放せない

わたし ずっと 怒っていた
保養よりも 避難だろ
あんたの軸足 どこにあるんだ と言われて
イヤーな気持ち おなかのあたりから
どうしても 離れないんだ

車をとばして 川岸へ
カーステレオから パクポー※の
ハングル言葉の リムジン江
ポロポロ オイオイ 泣いたよ
なみだと鼻水は あぶくま川へ 流したさ

わたし とらわれないことにしたんだ
ひとしきり 泣いて 怒ったから
わたしを責める きらいな人とも
ほんとうの正しさ 見つけられるってね

わたし 信じることにしたんだ
手にしたものを 放したら
きっと 次が やってくるってね
新しい 恋に 仕事に ふるさと が

(2013.4.15)

※ ロック・シンガー「朴保」。一貫して反核・平和のメッセージロックを歌い続けている。

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by johnny311 | 2013-06-29 08:04 | 第2集

お父さんのハンバーグ

今夜のごはんは ハンバーグ
おおっ やったね

ひき肉1キロ 玉ねぎ800グラム
これは 6人家族の量
妻と末っ子 米沢へ 娘は大学 サッポロへ
長男坊は転勤で 今じゃ次男と ふたりきり
一度に たくさん作るのは 帰省の息子に 持たすため

休みのたんび 南会津から 来っこどねえのに
向こうさ いたらいいべしさ 線量も低いし
友だちは二本松なんだよ 若連もあるしさ

原発 バクハツしたあとも
息子は 仕事で 逃げられぬ
会社 やめるか なやんだが
ある日 避難所 泊まり込み
戻った 息子がこう言った

オレ 避難所で なんもできなかった ただ 子どもと遊んだだけ
でも 行くだけで 喜んでくれる人がいたのさ
だから オレ もう逃げない と決めたんだ

そうか それは おまえが 決めるごど
だどもなあ こども できたら考えろ
ここさ いていいのか わるいのか

ハンバーグ 焼けました
おいしい と 息子の言う
お腹いっぱい 食べたなら
あとは 冷凍 持ち帰り

(2013.4.17)

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by johnny311 | 2013-06-28 08:34 | 第2集

お見舞い

ゴホ ゴホ ゴホ 下がらない熱
だるいなあ 年かなあ ブラブラ病かなあ

布団で丸くなっていたら
スギさんがやってきて あったかいそうめんを
こさえてくれた
夜道をとばし 相模原から
いつもの 南相馬へボランティア※
すごいなあ がんばってるなあ と 思ったら
泣けた

やさしい目のまんま 安心したんよ
背中をさすって ヒロミさんの 言う
でもね ゆんべね 子どもを怒鳴っちまって
と 言いかけて
泣いた

へっついの家と 土地と みんな買って
がっこうも 診療所も グループホームもつくりましょう
アメリカで トラストで 私 お金 集めるから
何年かかっても いいじゃない それが
セキさんの夢でしょ みんなの夢※でしょ
ね 元気がでたでしょう と話す
電話の向こうの ミエさんの声を聞いて
ただ ただ 泣いた

弱ったこころに 元気をもらったよ
あの人も 神様も
きっと 見守ってくれているしさ
じきに 満月
わたしの中も 満ちるでしょう

(2013.4.25)

※スギさんは神奈川の元の八百屋仲間で、勇気野菜プロジェクトで毎月被災地支援を続けている。
※みんなの夢というのは、作者が佐渡に保養所や学校、グループホームや診療所を建設するビジョンを提案していることを言っている。

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by johnny311 | 2013-06-27 08:34 | 第2集

保養

ひとつの 大切なことを
ていねいにやっていけば
おのずと 道にいたる

休ませてください とやってきたAさん
福島 山梨を 行ったりきたり かれこれ2年
結局 こっちに移住 生活保護も 取れました
保養 健康相談が いつのまにか 生活相談※

北海道行きが 決まったBさん
こんどは むすびば※のみなさんが きっと 支えてくれる
やりましょう できるところから

ひとりひとりの暮らしに
ていねいに向き合えば
入り口はなんでも おのずと 道は開ける

これだけやっていればいい
ということではないはずです

(2013.5.4)

※健康相談を担おうと始めた民間の活動が、被爆者の避難先のあっせんや仕事など、行政がするべき生活相談全般まで担わなければならなくなっている現実がある。
※むすびばは札幌にある避難や保養の受け入れ団体の名称。

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by johnny311 | 2013-06-26 08:49 | 第2集

でんわ

ああ ヒサオが なじょした
げんきで かせいでいるか
だば いかった
おめえひとりが かんちゃんとふたりか
ノトくんは 会津で ののちゃんはサッポロ
下の子とやすこは米沢か
いや たいへんなごどになった
離れて 暮らさねば なんねえことは

オラも年だども おめえも 昔なら じさまの年だ
物 いただいても お礼してねえって
物忘れ はじまってんでねえか
反対運動も 必要なんだべども
家 からだのごど 考えねばなあ

おめえさ 原発の えいきょうが出るのは
何年か 先だと思うけんど
オラは 明日にもくるかもしんねえ
そんときは 兄弟で相談してください

ことしは さくらの咲くときに  ゆき降って 寒い
おめえも からだに気をつけて がんばってな

(2013.5.8)

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by johnny311 | 2013-06-25 08:33 | 第2集

おいのり

朝 おいのり したよ
くまんばちが 飛んでいた
山ざくらの咲く 山の道で

こっちでいっしょに 暮らせますよう
また佐渡に 行けますよう
おとなになるまで 生きられますよう

ゆらゆらと 木の枝がゆれて
だれかが ぼくの声を聞いていた
見えないけれど たしかにいたよ

いっしょに まっしろな
いいで山※を 見たよ

(2013.4.13)

※ 飯豊山のこと

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by johnny311 | 2013-06-24 06:55 | 第2集

新幹線の車窓から田んぼが見える

田植え終わり うっすら みどり色の田んぼ
きれいだのう 美しいのう

おれは あの日から 米作り やめた
10年つづいた 自然農の田んぼ
あっと言う間に 草ぼうぼう

よこはまの 友だち呼んで 田植えしたっけ
草取りの 指の間から ドジョウがスルリ 逃げたっけ
天日干しの お父さんのお米 おいしいねと
子どもが 言ったんだ
あれもこれも みーんな どっかさ行ったんだ と思ったら
ふいに涙が はらはら こぼれた

田植え終わり 水の 張られた田んぼ
みごとだのう 愛おしいのう

百姓の心配は
セシウムか 風評か

(2013.5.15)

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by johnny311 | 2013-06-23 07:43 | 第2集